2000.12.08
人工の建材に対して自然素材の建築材料は、先に述べたような有害物質を出さない建材といえる。長い間、自然建材にとって変わっていた人工建材(新建材)の環境問題や人体への影響などが取りざたされ始めると、最近では昔から使われていた自然素材が少しずつ見直されるようになった。
人工建材に比べ自然建材は、時間の経過に追従し、変化しながらもいつまでも美しく風格を持ち続けるような気がする。昔の街並みや地方に行くと時々見受けられる白壁造りの倉は、今なお美しい。古いからというだけでなく、多くの人たちが美しいと感じるからこそ、保存運動も起こり見直されているのである。
それでは1960年代以降に多く建てられた新建材による住宅はどうだろう。特に建売住宅やプレファブ住宅に多く使われているが、一般的に20~25年の耐久性しかない(もちろんこれらは複合要素によるものだが)と言われている。数十年の間に、このような安っぽい建物により日本中が埋め尽くされた。風土、気候を無視した建物による町並みは、地域の独自性を喪失した。寒冷地ではただ暖房容量を大きくするというような機械的な操作に頼った。結果として環境に順応するような住まい造りは忘れ去られた。私達は、今一度原点に戻らなければならない。健康面から言えば、高密度高断熱住宅などといい、適当な換気もせずにメリットばかりを歌い上げ、有害物質さえ閉じ込めてしまうような健康に害を及ぼす建物もあるようなしまつである。
このようなことからも、住まいというものをしっかり見直さなければならない時期に来ているのではないか。そのためには、建築家や専門家もさることながら、建て主一人一人が、そのようなことに対して問題意識をもつことから始めなければ何も変わらない。問題のある家でも購入し、造ってしまうから、いつまでも変わらないのではないだろうか。建て主がある程度の選択眼を持つことが、住まいの質をよくする一番の近道ではなかろうか。結果的に、それが自分の健康を守ることになり、一生使える耐久性のある建物を造る事になり、また環境問題を解決することにもつながるような気がする。
家の耐久性は少なくとも60年は目標としたい。木は約60年で建材として使えるようになる。このサイクルをうまく循環することが環境を破壊しないことにつながる第一歩であり、建物にガタがきて一生のうちに何度も家を建てなければならないようなことにはならないのである。